コラムColumn

2016.02.12

体調管理

働く人の心の健康を守る「ストレスチェック制度」が施行されました

 「ストレスチェック制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことを目的にした新たな制度で、労働安全衛生法の改正により、昨年12月1日よりスタートしました。
 働く人の多くが、職場でさまざまなストレスにさらされています。厚生労働省が5年に1度実施している「労働者健康状況調査」によると、ストレスを感じていると答えた労働者の割合は、1982年には50.6%だったのが、10年後の1992年には57.3%、30年後の2012年には60.9%と増加しています。2012年の調査結果を年代別にみると、20代が58.2%、30代が65.2%、40代が64.6%、50代が59.1%、60歳以上が46.9%との結果が出ており、男女とも30〜40代の働き盛り世代にストレスが高いことがわかっています。
 深刻なのは、これらストレスが、うつ病や自殺を引き起こす原因となっていることです。厚生労働省が発表した平成25年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、精神障害による労災請求件数は1,400件以上と過去最多を記録しているとのこと。自殺やうつ病による社会的損失額も、年間約2兆7000億円に上るといいます。
 ストレスチェック制度は、こうした現状を背景にスタートしたもので、制度の施行により職場のメンタルヘルス対策が促進されることが期待されます。今回はそんな新制度についてご紹介いたします。                     


【事業所に義務づけられた“ストレスチェック”とは?】
 ストレスチェックとは、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査のこと。労働安全衛生法が改正され、労働者(常勤社員)が50人以上いる事業所では、毎年1回この検査を実施することが義務づけられています。
 検査では、まずストレスに関する質問票が配布され、記入したものを実施者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士など)が集計し分析。質問票や分析結果は、実施者が第三者に閲覧されないよう管理し、企業は本人の同意がなければ結果を入手することができません。
 評価の結果、自覚症状の高い人や、自覚症状が一定程度あってストレスの原因や周囲のサポート状況が著しく悪い人は、「高ストレス者」と判定。医師との面接が必要な場合は、本人に直接案内があります。そうした判定を受けた人は、1ヵ月以内に申し出、それから1ヵ月以内に指導を受けることができます。面接指導の実施後、事業所は医師の意見を聴いた上で、必要な場合は、作業の転換、労働時間の短縮など、適切な措置を講じなくてはいけません。さらに、結果に基づく医師の意見は、安全衛生委員会、もしくは労働時間等設定改善委員会などへ報告等を行うことが求められます。
 ストレスチェック制度は事業所に義務づけられた制度ですが、従業員が受けることは義務ではありません。これは、うつ病患者などチェックを受けること自体、精神的負担となる人に配慮したものと考えられています。また、実施の義務があるのは従業員50人以上の企業であり、これに満たない場合は、できるだけ実施することが求められる“努力義務”となります。人数の基準は事業所ごとのもので、全従業員が50人以上いても、支店や店舗などの人数が50人未満なら、義務ではなく努力義務の範囲となります。対象となるのも常勤社員で、派遣社員や契約期間が1年未満の人は対象外となります(派遣社員の場合、派遣元で実施されます)。

★ストレスチェックで質問されるのはこんなこと!
 ストレスチェックは、働く人が自ら調査票(質問用紙)に記入あるいは入力する形で実施されます。厚生労働省のガイダンスによると、調査票は国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(計57項目)を用いることが望ましいとしています。具体的には、たとえば以下ような質問に答えることになります(質問には[そうだ/まあそうだ/ややちがう/ちがう]といった4段階の選択肢のなかから、あてはまるものに○をつける形で答えていきます)。

(1)仕事のストレス要因
職場における労働者の心理的な負担の原因に関する項目
・非常にたくさんの仕事をしなければならないか
・時間内に仕事が処理しきれないか    …など
(2)心身のストレス反応
心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
・イライラしているか
・ひどく疲れているか    …など
(3)周囲のサポート
職場でともに働く従業員から受ける支援に関する項目
・上司に気軽に話ができるか
・職場の同僚が頼りになるか   …など


【ストレスは早めに自覚することが重要】
 ストレスチェック制度が施行されて2ヵ月あまり。スタートしたばかりの制度について、厚生労働省は「目的はうつ病の発見ではなく、働く人にストレスを早めに自覚してもらい、職場の改善につなげることにある」といっています。
 制度が施行されたとはいえ、前述のように、すべての働く人がチェックを受けるわけではない以上、私たち一人ひとりが意識を持ち、早めにストレス解消する術を身につけることが重要です。実際、うつ病を抱える人の多くが、ストレスを過度に抱えていることに気付かず、発症に至っていることが指摘されています。さらに、ストレスは精神的疾患を引き起こすだけではありません。精神的に受けたダメージにより生体機能に支障を来せば、がんをはじめとしたさまざまな病気をも発症させます。毎日をいきいきと健やかに過ごすためには、身体に、そして心にも充分に目配りする必要があります。たとえば厚生労働省が推進する以下のセルフチェックなども参考にして、ストレスが強いと感じる方は、ストレス解消の向けた対策をぜひ早めに講じていただきたいと思います。

■あなたもチェックしてみませんか!
厚生労働省が推進する、5分でできる職場のストレスセルフチェック
http://kokoro.mhlw.go.jp/check/index.html

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