健康コラム

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動脈硬化

女性も気をつけたい動脈硬化

「女性は動脈硬化になりにくいのよ。だから大丈夫」

そう信じてしまって、検診を受けない方も少なくないと聞く。確かに40代前半までの女性は、女性ホルモン、エストロゲンの影響で動脈硬化を起こしにくい。しかし更年期に入って、エストロゲンが減ると、この恵みを受けにくくなってしまうことをご存知だろうか。

たるみやしわが増えるとか、ほてりやのぼせ、イライラといった、表面的なことばかり気になってしまいがちだが、体の内部でも変化が起きていることは見逃さないでほしい。

日経ヘルス・プルミエの調査によると、平均的な閉経年齢は50.5歳だったという。更年期は閉経をはさんで前後5年程度の期間をさす。そうなると、45歳くらいから女性ホルモンの恩恵は小さくなっていると考えたほうがよさそうだ。たとえば大動脈乖離という、心臓の近くの血管の一部が破損する病は、男性より女性の発症率が低い。しかし閉経後は、女性でも徐々にその発症数が増えていくという。

エストロゲン低下とともに起きやすくなる動脈硬化

典型的な動脈硬化は、悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低比重リポたんぱく)コレステロールが、酸化してどろどろのおかゆ状になって動脈壁にくっつくことから始まる。エストロゲンには血液中のコレステロール濃度を下げる働きがある。しかし更年期に入って、エストロゲンが低下すると、特にLDLコレステロール濃度が上昇し、どろどろが発生する確率は高くなる。

動脈壁にくっついたどろどろは粥種(じゃくしゅ)と呼ばれ、血流を妨げる。血流が妨げられると血圧が高まり、心臓に負担がかかると同時に、その圧力から血管の壁も厚くなって、さらに血管が細くなる。

血管が細くなると、当然のことながら血流は少なくなる。血流が減ると栄養や酸素の不足や、新陳代謝の衰えによる動脈細胞の不活性などが起きる可能性が高まり、動脈の弾力性は低下していく。まさに「負のスパイラル」に入ってしまう。

動脈壁が厚くなって血液の流れる部分が狭くなったり、動脈の弾性が失われたりすることにより、血液がスムーズに流れなくなる状態、この状態こそが「動脈硬化」と呼ばれる症状だ。

また、どろどろの粥種が破れると、そこに血小板と呼ばれる止血に重要な働きをする細胞が集まってきて、血の塊である血栓を作る。血栓は血管を狭め、またはがれて心臓や脳の血管に流れ込むと、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす原因となる。動脈硬化が原因となって発生する合併症の一例である。

根拠があった「バス停ひとつ手前で降りる」

おそろしい動脈硬化を発見するには、また防ぐにはどうすればいいか。

動脈硬化はほとんど自覚症状がない。しかし検査をすれば簡単に見つけることができ、状態がわかれば治療や緩和などの対処もできる。

予防には食事と運動の改善、ストレスの回避がベストだ。たとえば食事では、脂質異常症(高脂血症と呼ばれていた)を防ぐメニューを心がけたり、ブロッコリーのような抗酸化性の高い成分を含む食材を多めにしたり、こんにゃくやごぼうなど食物繊維が豊富な食材を十分に食べることなどが、予防の第一歩とできる。

運動では、適度な有酸素運動として、ウオーキングや水泳などが薦められる。米国の予防医学専門誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・プリベンティブ・メディシン」によると、毎日あと1000歩の歩行を増やせばリスクは減らせるという。1000歩といえば約500m、大阪や京都のような都市ならバス停ひとつ分だ。バス停ひとつ手前で降りて歩きましょう、とお医者さんは薦める。それにはうなずけるワケがあったのだ。