健康コラム

インタビュー

<第4部>陽子線治療の実施について〜期間、費用、治療を受けるまでのプロセス〜

「陽子線治療の特色と今後の展望について」

お話/玉村裕保先生(福井県立病院 陽子線がん治療センター長)
日 時/2017年3月7日(火)
場 所/福井県立病院 陽子線がん治療センター センター長室
参加者/藤田 浩(株式会社関西メディカルネット 代表取締役社長)
    吉野 仁(同社 営業部 副部長)
    金 敦子(メディカルライター)
    長谷川千美(株式会社ヤップ ディレクター)


<第4部>陽子線治療の実施について〜期間、費用、治療を受けるまでのプロセス〜


[藤田] 陽子線治療には、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。

[玉村] がんの種類と進行状態、がんが発生している場所(がんが重要な臓器の近くにあるかどうか)などを総合的に判断し、決定します。頭頸部がんで6~7週間肺がんで2~7週間肝臓がんで2~4週間通院が目安です。治療は1日1回の週5日、外来で照射します。30分ほど動かずにじっと治療台に寝ていただくだけなので、原則、入院の必要はありません。

[進行] 費用が気になりますが、いくらぐらいかかるのでしょうか。

[玉村] 平成28年度からは小児がんへの陽子線治療が公的医療保険の適用となりましたが、それ以外は公的医療保険の対象ではないので、全額自己負担となります。当センターでは陽子線を照射する回数で費用が違っており、20回までで240万円、21~25回は250万円、26回以上は260万円です。付随する検査や投薬等は公的医療保険の適用となります。諸費用を含め、300万円程度とご理解ください。ただし、陽子線治療は「高度先進医療」の対象となるため、民間の医療保険でこの特約がついている場合は、かなりの金額が軽減されます。また、福井県に1年以上お住まいの方が当院で治療される場合は、治療費の減免や通院交通費の助成などがあります。

[藤田] 以前、他のがん治療の専門医の方から聞いたことがあるのですが、陽子線を選択肢のひとつとして提示しても、公的医療保険の対象にならないから患者さんが断るとおっしゃっていましたが、そのようなことがあるのでしょうか。

[玉村] 十分な説明を受けた上で、そうした結論に至っているのならそれでいいでしょう。ただ、最近では高度先進医療保険に入っておられる方も少なくありません。そうした方は、なにかのときに使いたいと思ってその保険に入っておられるのですが、それを知らずにX線治療を受けてしまうと、放射線治療は安全には同一場所へ1回しか治療できないので、その後に陽子線治療を受けることができなくなってしまいます。そのようなことにならないよう、当センターでは丁寧なご説明を心がけています。そうすると、高度先進医療保険に入っている多くの方が、陽子線治療を選択されます。陽子線治療がすべてのがんにおいて、公的保険の適用となったならば、X線と陽子線の選択の際、多くの患者さんが陽子線を選ばれるのではないかという気がしています。陽子線の有用性については、放射線治療の医師の多くが知っていますが、いまはIMRTがあるからそれで十分だという意見もあります。それは工夫すればIMRTでもできますよ、ということを意味しているのです。つまり、陽子線には負けているけれど、IMRTでもできるからいいじゃないか、ということです。一方で、IMRTの方がより良いという場合もありますから、病状に合わせ、それぞれの特徴を治療に活かせばいいと思います。

[藤田] IMRTのほうがいいケースとはどのようなものですか?

[玉村] 自由度が高いという点がIMRTのすばらしいところです。照射したい腫瘍と照射したくない正常部に対し、どのような方向からどの程度の照射線量でアプローチするか、条件に合わせて複数のプランを算出できるのが、IMRTの強みといえます。たとえば車で大阪から京都に行こうとしたとき、信号は20個まで、右折は10回までという条件を設定するといくつものルートが出てきますよね。そのようなイメージで治療計画を行っていると思ってください。

[藤田] なるほど。治療を受ける際には、患者サイドも事前に情報を得ておくことが大切なのですね。では次に、陽子線治療を受けるまでには、どのようなプロセスがあるのかお教えください。

[玉村] 患者さんが陽子線治療の対象となるかどうかを検討し、対象となった場合は入念な準備にとりかかります。まず病巣を正確に狙えるように体を固定するための固定具を作成し、それをつけて治療計画用のCTやMRI撮影をします。実際の治療装置を用いて測定を行い、計測結果も確認します。それらをもとに患者さんによる治療のリハーサルを行い、不都合な点がないかを最終確認します。このような準備期間を2週間程度予定していますが、患者さんの病気の状態により大急ぎで行い、1週間程度で陽子線治療を開始するケースもあります。ちなみに、陽子線治療の適否については、敦賀市内でも外来診察を行っています。

[進行] 治療のリハーサルができない人もいるのでしょうか。また、それはどういう理由からでしょうか。

[玉村] 準備期間に2週間程度かかるため、リハーサルを迎えた時点で太っていたり、痩せてしまわれたりすると、固定具が合わず、やり直しになります。固定具は完全オーダーメイドなので、患者さんの状態が変わると、こうしたことが起こるのです。あるいは、呼吸状態があまりに悪く、30分じっとするのが大変な方の場合もそうですね。そういう方に対しては、他の治療法も考慮します。

[進行] 陽子線治療を受けようかどうか、迷っている場合はどうしたらいいですか。

[玉村] その場合は、かかりつけ医の了解を得たうえで紹介状を書いていただき、自由にセカンドオピニオンの受診をしていただくことが可能です。陽子線がん治療専門医の立場から、陽子線がん治療の内容やそれ以外の治療法を、治療成績や副作用についてじっくりご説明します。