健康コラム

インタビュー

<第3部>陽子線治療の強みと副作用について

「陽子線治療の特色と今後の展望について」

お話/玉村裕保先生(福井県立病院 陽子線がん治療センター長)
日 時/2017年3月7日(火)
場 所/福井県立病院 陽子線がん治療センター センター長室
参加者/藤田 浩(株式会社関西メディカルネット 代表取締役社長)
    吉野 仁(同社 営業部 副部長)
    金 敦子(メディカルライター)
    長谷川千美(株式会社ヤップ ディレクター)


<第3部>陽子線治療の強みと副作用について


[藤田] 陽子線治療はどのようながんに強みを発揮しますか?

[玉村] 脳脊髄のがん頭頸部がん食道がん肺がん肝臓がん前立腺がん腎臓がん骨軟部腫瘍などの病変の範囲がはっきりわかるがんが、おもな治療対象となります。反対に、白血病などのかたまりを作らないがんや、転移などで広範囲に広がっているがん、さらに不規則に動く臓器のがん(胃がんや大腸がんなど)は正確な照射が難しく、陽子線治療の対象になりません。平成28年4月に日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は粒子線治療の適応症と統一治療方針を作り、公表しました。私たちも毎日このガイドラインに基づき、治療しています。

[藤田] 治療の均一化ということですね。

[玉村] そうです。陽子線治療の有効性と安全性について、適切な評価を行う必要があるからです。このため私たちは治療した症例を学会に全例登録しています。このような環境を整えることでさらに治療の精度が高くなり、その治療が全国の治療施設で受けられるようになっています。逆説的に言えば、どこの病院でも簡単に始められる治療ではなくなったということです。

[藤田] 福井県立病院の陽子線がん治療センターでは、とりわけどのようながんに対する治療を得意とされていますか?

[玉村] 頭頸部がん、食道がん、肺がん、前立腺がん、小児がん(固形)などがそうですが、JASTRO が適応症とするすべてのがんが治療対象です。私は食道がんを主に担当していますが、これまで全国から来られた50人ほどの進行食道がん患者さんの治療を行い、1年後のデータでは7割以上が治癒されています。

[藤田] 食道がんの場合、切ると切らないのとでは予後が全然違いますからね。

[玉村] JASTROの粒子線治療の標準治療(全国統一治療指針)では、局所進行食道がんに対しては60~70グレイまでの線量をあててよいとされています。また、当センターで行っているX線治療と陽子線治療と化学療法を内視鏡とともに組み合わせ、66~70グレイを照射する治療法は学会の公認をいただいています。

[進行] 放射線療法全般の副作用のお話は先ほど伺いましたが、陽子線特有の副作用などはありますか?

[玉村] 照射したところの皮膚が日焼けの強いような状態になるのは従来のX線と同じですが、起こる副作用がわかっているので、退避あるいは解決しやすいのが有利な点だと思います。恐れているのは後から出てくる重篤な副作用ですが、それもX線よりも明らかに少なくすることができます

[藤田] 皮膚症状はよく出るものなのですね。前立腺がんだと放射線療法によって尿失禁や男性機能を失うとか、直腸からの出血などがあると聞きますが、陽子線の場合は正確に照射すれば大丈夫ですか?

[玉村] 正確な治療をすればするほど副作用が減らせます。当院は「CT位置決め装置(後述)」で腫瘍の3次元的な位置情報を解析して照射するので、重篤な副作用が出ることはほとんどありません。「CT位置決め装置」を取り入れる以前は、前立腺がんでは直腸の出血など、副作用が生じることが少なくなく苦慮しました。陽子線は切れ味がいい分、副作用も激しいという側面もあります。陽子線治療といってもいろいろな施設でさまざまな方法が実施されているので、ひとまとめにして陽子線の副作用を語るのはむずかしいかもしれません。